Vol.21 第21回本公演
YELLOW ROAD 98
~黄沙之路~
そして あなたが消える日…。
(チラシのキャプションより)
作・演出:小倉昌之
1998年11月13日(金)~11月15日(日) 全5ステージ
会場:SPACE107(東京/新宿)
出 演
丹治智浩
高畑加寿子
渡辺幸枝
トラック高橋
石黒貴之
壱森マサヒロ(シリアルナンバーズ)
太田和輝
菊原光一
伏見実千代
小林和徳
小倉昌之
STAFF
舞台監督:山口勝也(バーニングブルー) 宮脇良太
美術監督:佐藤大樹
照明:大串博文(アステック)
音響:飯田博茂(飯田音響)
大道具:堀進太郎 大谷憶寿
中道具:今井園子
小道具:トモヒロ・アンダルシア
衣装:羽角聖美 北代佳代
運搬:トラック高橋
劇中歌:吉村渓
ゲームマスター:佐藤大樹
スチール:三野輪一夫
VTR:堀進太郎
表方:草野美紀子 仁田尾里美 永野美智子
制作統括:吉村賢太郎
娯楽通信:吉村賢太郎 羽角聖美 仁田尾里美 エム ナマエ
協力:佐藤俊夫・千鶴子ご夫妻 久保田貴 石川真弓 金子佳加 石原瑠美
後援:ビーウィック有限会社
制作:劇団娯楽天国制作部(パラダイス・パーティ) 高畑加寿子
STORY
泥嶋明(丹治智浩)は、三流ゲーム会社で働くゲームプログラマーであったが、生きていることに意味が見いだせず、鬱々と日々を送っていた。上司の錫木専務(小倉昌之)は、やる気のない彼を叱咤激励するのだが、一向にラチがあかない。泥嶋の同僚、山田案子(高畑加寿子)や獅子頭賢治(太田和輝)は、全くのダメ社員で、錫木専務の頭は痛かった。唯一まともな社員は経理の小津しのぶ(渡辺幸枝)であった。彼女は、泥嶋を元気づけるが、彼はなかなか立ち直れない。
泥嶋は趣味でひそかに、あるゲームを開発していた。それは「OZ」というソフトで、「オズの魔法使い」をモチーフとしいたRPGであった。それを知った錫木専務は、泥嶋に売れないソフトを趣味でつくるのではなく、最新の売れるゲームを開発せよと命令する。傷心の泥嶋は「OZ」の開発にますますのめり込んで行く。
気を失っていた泥嶋は、マンチキンという小人たち(石黒貴之 菊原光一 伏見実千代)に囲まれて、自分が坊主の格好をしているのに気付く。小人の長老(トラック高橋)に黄色い道を歩み、西方にあるエメラルドに輝く「ニルヴァーナ」の都へ行き世界を救うようにいわれる。
泥嶋は自分が何者かわからないまま黄色い道を進むが、途中で山田案子そっくりの孫悟空(高畑加寿子二役)や、獅子頭賢治そっくりの猪八戒(太田和輝二役)に出会う。泥嶋は自分のつくったゲームソフトの世界に入り込んでいることに気付き、自分が三蔵法師になっていることを知る。「オズの魔法使い」をモチーフにしたゲームソフトなのだから、本来自分はドロシーであり、案山子とライオンとブリキ男が登場するはずなのだが、何故か「西遊記」の世界になってしまっていることに驚く。
泥嶋三蔵法師は、孫悟空にこの世界が「ゼロの闇」という正体不明の現象によって侵されていることを聞く。そして、その「ゼロの闇」から世界を救うことが、泥嶋の使命だといわれる。泥嶋三蔵は、それがコンピューターの「バグ」であろうと推測するが、ゲームソフトの主人公となってしまっている自分にはどうすることもできない。
途中、欲深な武器商人の沙悟浄のようなセンム(小倉昌之二役)を仲間にして、パーティは砂漠を越え、モンスターたち(小林和徳 壱森マサヒロ)が多数現れる謎の洞窟を、各人の努力で抜けると、ニルヴァーナの都に到着する。
ニルヴァーナの都で一行は、オズの魔法使いに出会う。しかし、それは小津しのぶそっくりな西の魔女(渡辺幸枝二役)によって作り出された幻影であった。襲いかかるモンスタ-たちと戦うが、孫悟空は傷つき、センムは死んでしまう。自暴自棄になった猪八戒の一撃で西の魔女を倒すが、ついに「ゼロの闇」が世界を滅亡の淵へ追いやろうとしていた。泥嶋三蔵は、迫り来る「ゼロの闇」を吹き飛ばし、仲間と世界を救うために自爆する。
泥嶋が気がつくと、観世音菩薩(トラック高橋二役)と恵岸行者(石黒貴之)の姿があった。現実の世界と夢の世界のどちらかを選べと観世音菩薩にいわれた泥嶋は、夢の世界を選ぶ。すると、岩山が開き、再び黄色い道が現れる。彼方には虹が輝いていた。
ホンモノの孫悟空たち三人が新たに出現し、ホンモノの三蔵法師となった泥嶋は、虹の彼方へ進んで行くのであった。
公演メモ
・1992年7月に初演された作品の再演。骨子は同じだが、ストーリーは大幅に書き直された。
・タイトルの意味は、F・ボームの小説「オズの魔法使い」でエメラルドの都まで続く“黄色いレンガの道”と「西遊記」の砂漠の黄砂吹き荒れるシルクロードのふたつに掛けてある。“98”は1998年の作品という意味と、当時発売されたパソコンOS“windows98”のもじり。
・劇中、主人公が「ニルヴァーナ」つまり「涅槃」へ行くというストーリーであり、娯楽通信のキャッチコピーも「そうだ。涅槃へ行こう」というJRのキャッチコピーのもじりであった。が、小屋入り前にスタッフの知人が亡くなるわ、出演者の母親代わりの親族が亡くなるわ、リハーサル中に高畑加寿子が足を骨折するわで、脚本が縁起が悪いからだといわれ、公演が危ぶまれる。
・この公演を最後に劇団の中核を担ってきた丹治智浩が退団。
座長が当時を振り返って
「ほんま、まわりで次々葬式が出た話を聞かされて、大丈夫かいなと思うとったら、劇場でタカハタが骨折するし、どうしよう思うたら、タカハタの実家からお父さんが倒れたという電話が掛かってきて、もうあかんと思うたで。結局タカハタのお父さんは無事やったけど、ワシは気が小さいんじゃ!驚かさんといてくれ!!」