Vol.20 第20回本公演
WAR HO HO
ぼくらが生まれるずっとずっと前
この海の向こうにあの人たちがいた。
南の海の熱い風と太陽、白い砂とヤシの実とバナナとパイナップルと、
そして必死で生きるあの人たちがいたんだ。
おーい、聞こえるかーい!この声、波が届けてくれるかな
アー・ユー・ハッピー?!
作・演出:小倉昌之
1998年5月29日(金)~5月31日(日) 全5ステージ
会場:SPACE107(東京/新宿)
出 演
丹治智浩
高畑加寿子
トラック高橋
渡辺幸枝
木村遊美
入江謙舟
壱森マサヒロ(シリアルナンバーズ)
小倉昌之
STAFF
舞台監督:山口勝也(バーニングブルー) 宮脇良太
美術監督:佐藤大樹
照明:大串博文(アステック)
音響:飯田博茂(飯田音響)
大道具:石川真弓 堀進太郎 大谷憶寿
中道具:今井園子
小道具:台風25号(冬一番) 高津映画装飾(株)
衣装:羽角聖美 北代佳代
運搬:トラック高橋
ブレーン:吉村渓
スチール:三野輪一夫
VTR:堀進太郎
表方:草野美紀子 仁田尾里美 永野美智子 金子佳加
制作統括:吉村賢太郎
娯楽通信:吉村賢太郎 羽角聖美 井村和人
協力:佐藤俊夫・千鶴子ご夫妻 西山さん Mr.Toby Warapa(パブアニューギニア大使館) 松本奈緒美
後援:ビーウィック有限会社
制作:劇団娯楽天国制作部(パラダイス・パーティ) 高畑加寿子
STORY
昭和20年5月。太平洋戦争末期の南方戦線、ラバウル近海にあるプンジャロ・モケケ島には、高崎歩兵第115連隊第3歩兵大隊が兵站拠点として島中央部に駐留していた。島の北岸にある北部駐屯地には、山口分隊が駐屯していた。島中央部の司令部との音信が不通になってしまった山口分隊長は、隊をふたつに分け、自ら密林を抜け中央司令部へと向かう。北部駐屯地には楯井丈一郎伍長(丹治智浩)をはじめ、山本五十六上等兵(トラック高橋)、毒島猛臨時衛生兵(渡辺幸枝)、キノシタトウキチ見習い二等兵(高畑加寿子)という、あまり役に立たない4名を残していった。
プンジャロ・モケケ島は豊かな島で、食料に困ることはなく、スーちゃんと呼ばれる原住民の娘(木村遊美)からの献納による食料などもあり、ズッコケ分隊はのどかに暮らしていた。山口先遣隊が中央司令部に向かってから2週間が過ぎたある日、島北岸にひとりの将校が流れ着く。尾能田中尉と名乗る彼は、ラバウル玉砕を受け、転進中に船が攻撃され、漂流してきたという話であった。尾能田は戦時中とはとても思えない呑気そうな生活を送っていたズッコケ分隊の連中に激怒し、厳しく調練を始めるのであった。尾能田は、パラオ出身の混血少年兵キノシタを差別し、食料を独り占めにし、一同から反感を買っていたが、上官には従うべしという楯井伍長の言葉に耐えていた。女に飢えていた尾能田がスーちゃんに手を出そうとしたその時、敵機が上空を現れる。一同応戦するが、尾能田だけは逃げまどう。敵機が去った後、尾能田が落とした軍人手帳から彼が中尉の服を奪って逃げ出した脱走二等兵であることがわかり、一同から、叩きのめされる。
山口先遣隊が戻ってこないことに業を煮やした楯井分隊長は、北部駐屯地を放棄し密林を抜け中央司令部に向かうことにする。スーちゃんと別れ一同は密林に入って行く。密林での行軍では、蚊の大軍に襲われれたり、毒島衛生兵がマラリアに罹患したりして苦労しながら中央司令部に向かう。しかし、そこで彼等が見たものは、壊滅して瓦礫になってしまった中央司令部と山口分隊の同志たちの死体であった。
途方に暮れた一同は、再び北部駐屯地に戻ることにする。しかし、戻ったところで、通信は途絶えており、軍命令も届かず取り残されてしまったままであった。
そんな時、島北岸に米軍の船団が現れる。窮した楯井分隊長は、玉砕することに決める。南十字星が輝く夜空の下で、一同別れの杯をかわす。しかし、いざ自決用の手榴弾を渡されると、山本上等兵は逃亡、尾能田は消えてしまう。
激怒しながら楯井分隊長は朝を迎える。なかなか襲ってこない米軍にイライラしていると、「戦争ハ終ワッタ。降伏セヨ。」という声がラウドスピーカーから聞こえてくる。いよいよ米軍が上陸したのだ。そして、米軍に囲まれて現れた使者は、なんと尾能田であった。彼は勝手に降伏して、楯井たちの説得にやってきたのであった。尾能田は、日本が戦争に負けたことを伝え、日本へ帰るなら夕刻までに米軍の船に来いといい残し、米兵たちと去って行く。残された楯井たちは、尾能田の言葉を信じることができなかった。
そこへ、山本上等兵が戻ってくる。懺悔して自決しようとする山本をバカバカしいからやめろと楯井は制止する。
日本へ帰る船が出航してしまうことを知りながら、尾能田のような日本人たちがいる故郷には帰りたくないと、島に残ることを決意するのであった。
公演メモ
・タイトルの「WAR HO HO(ウォーホホ)」とは、架空の「プンジャロ・モケケ語」での感嘆詞に、戦争という意味の「WAR」を引っかけた造語。
・この作品は、「プンジャロ・モケケ島3部作 第1弾」と呼ばれる。しかし、3部作と銘打ちながら、3作目はいまだに書かれていない。
・出演者が軍歌や当時の流行歌を歌う、ソング・イン・ドラマとなる。
・戦時中、兵隊で南方戦線にいっていたお客様から、台詞や用語は正確であるとのお墨付きをもらう。
・この作品から、話の中核を劇団員だけで構成する”第4期劇団娯楽天国”に突入する。
・日本兵を演じた役者たちは、女優もすべて頭を丸坊主になる。このおかげで高畑加寿子は、公演後内定していたテレビドラマ「ウルトラマンティガ」の出演を断られる。
・スーちゃん役の”木村遊美”とは、現・岡山支部長の山形祐子のこと。
・娯楽天国ガイジン枠の入江謙舟氏は、3度目の出演。今回の役はアメリカ兵。
座長が当時を振り返って
「この芝居では太平洋戦争のことをかなり調べたもんや。場所と登場人物は架空やけど、用語や所作などはかなり史実に忠実のはず。現実に南方で戦ってこられたお客さんに誉められたときは嬉しかったなぁ。しかし、たかが60年前のしかも当時の日本人が存命しているのに、この時代のことが何も伝えられていない現在の状況というのは、ほんまに問題あるで。」