Vol.8 第8回本公演
ブラジルの水彩画
~AOUAREA DO BRASIL~
いつのまにか、世界では新しいドラマが始まりました。
ここしばらく脇に回っていた日本は、いつのまにか主役をやらされています。
ブロードウェイの舞台を初めて踏んだ田舎役者のようで、
キョロキョロ、オドオドしてスポットライトの位置すら見えていません。
国内に目を転じても同じ事です。
巷に情報はあふれ、かつての常識は通用せず、時間はどんどん流れていく。
おそらく新しい日本に生まれ変わろうとする
過渡期なのでしょうが、道が見えてこないのは現実です。
今回は、その鬱屈たるジレンマを打破しようとする物語です。
時代が進むにつれ、重くのしかかってくるプレッシャーを
知らないうちに背中にのっけたまま、哀れなほどマゾヒスティックになっている
私たち小市民の悲喜劇が、うまく描ければいいなと思っています。
小倉昌之
(チラシのキャプションより)
作・演出:小倉昌之
原案:佐藤治彦
1991年10月16日(水)~10月20日(日) 全7ステージ
会場:下北沢駅前劇場(東京/下北沢)
出 演
石井元
植松瑞代
羽角聖美
高畑加寿子
高橋宏誌
鶴田さおり
綱嶋正和
小倉昌之
パラダイス・サンバ・ダンシングチーム
STAFF
舞台監督:山口勝也(バーニングブルー)
進行:島村広路
美術監督:佐藤大樹
照明: 大串博文(アステック)
照明操作:沼澤毅
音響:牛山惠子
音響操作:諸橋英治
舞台:河本満美子 今尾則之 牛島聡子 坂本友紀 堀進太郎 馬野裕朗
小道具:あいまいもこ
大道具:高津装飾美術(株)
衣装:羽角聖美
美粧:八木晶子
宣伝美術:上田直史
撮影:佐藤大樹
娯楽通信:石井元 高畑加寿子
企画・制作:パラダイス・パーティ
STORY
舞台は東京にある筋金入りの小市民、円高家。主人の円高イチロウ(石井元)はうだつのあがらぬ平凡なサラリーマンで、妻の円高レイコ(羽角聖美)に毎日尻を叩かれていた。息子の円高イチロウタ(綱島正和)、円高カズミ(高畑加寿子)は親の言うことなど全く聞かず、頼りない父親を内心軽蔑していた。
しかし、イチロウには夢があった。それはブラジルに移住して安楽に暮らす夢であった。イチロウはあるとき美術館でブラジルの美しい風景画を観てから、それは彼の切なる夢となっていた。
見かけだけは平穏に見える円高家に魔の手が忍び寄っていた。妻・レイコが隣家の弗安夫婦(植松瑞代・高橋宏誌)に進められ、株の投資を始めていたのである。証券会社の銭亀(小倉昌之)は、甘い言葉でレイコを籠絡し、円高家の貯金を全てを株に投資させていた。
だが、所詮素人の投機である。最初は儲かっていた株もブラックマンデーにより大暴落。家屋敷まで抵当に入れて金をつぎ込んでいたレイコはついに発狂する。大混乱に陥る円高家。あいそをつかし家を出ていく子供達。呆然と佇むイチロウの脳裏には、ブラジルで楽しそうにサンバを踊る一家の姿があった…。
公演メモ
・経済評論家として活躍中の佐藤治彦氏に原案をいただく。
・この頃座長・小倉はサラリーマンとの二足の草鞋から解放される。ただ、二足の草鞋のストレスは想像以上にきつかったようで、公演決定後、腹膜炎を起こし緊急入院。おかげで、脚本が大幅に遅れる。
・タイトルはサンバの名曲「Brasil」の原題直訳。エンディングで流れた。
・ラストシーンでは20名くらいのパラダイス・サンバ・ダンシング・チームが毎日日替わりで踊り狂った。
・記録ビデオなし。
座長が当時を振り返って
「タイトルが決まって、チラシも刷り上がって、さあこれからというときに救急車で運ばれた。あと3日遅かったら死ぬところやったらしい。ワシもきつかったけど、脚本もなくて宙ぶらりんの劇団員にはもっときつかったわな。ほんま今さらながらすんません。」