Vol.23 第23回本公演
ショウ☆ルームス
東京近郊のとあるシティホテル。
それぞれの部屋で繰り広げられる、ゆかいで不思議なちょっぴりせつないストーリー。
都会の夜のファンタジック・オムニバス
作:劇団娯楽天国
脚本・演出:小倉昌之
1999年11月19日(金)~11月21日(日) 全5ステージ
会場:銀座小劇場(東京/銀座)
出 演
高畑加寿子
渡辺幸枝
太田和輝
菊原光一
近藤綾子
小倉昌之
STAFF
舞台監督:宮脇良太
美術監督:佐藤大樹
照明:大串博文(アステック)
照明操作:大塚裕香里(アステック)
音響:飯田博茂(飯田音響)
大道具:久保田貴 高橋謙一 堀進太郎
中道具:今井園子
小道具:渡辺幸枝
衣装:高畑加寿子
スチール:前田みき
VTR:堀進太郎
輸送:神村文人 斉藤俊彦
娯楽通信:吉村賢太郎 仁田尾里美 白石佐代子
表方:草野美紀子 仁田尾里美 白石佐代子
制作:パラダイス・パーティ 高畑加寿子 仁田尾里美 永野美智子 白石佐代子
制作統括:吉村賢太郎
後援:ビーウィック有限会社
企画・製作:「ショウ☆ルームス」実行委員会
STORY
「 ダブルベッド 」
イベント企業に勤める野口(菊原光一)と西城(小倉昌之)は、仕事が終わって横浜にあるビジネスホテルにやって来た。ホテル近くのパシフィコ横浜では、米映画俳優のブルース・ウィリスがボクシングのエキシビジョンマッチを行うとのことで界隈は賑わっていた。野口は、部屋に入ってベッドがダブルベッドなのに驚く。野口は男二人でダブルベッドに寝る訳にいかないとホテルにクレームを出すが、エキシビジョンマッチのおかげで部屋は満室だと断られる。
野口は、最近仕事がうまくいかない愚痴や妻に離婚を迫られていることを、西城に話す。西城は暖かく野口の話を聞いてやる。実は野口は多額の借金が返済できず、どうしようもない状態に陥っていることを話す。西城は、野口の離婚を条件に借金を肩代わりしてやると話す。何故そこまでしてくれるのかといぶかる野口に、西城は、実は自分はゲイで、入社したときから野口に目を付け、ホテルのダブルベッドも野口と甘美な一夜を過ごすために押さえたのだと話す。驚愕する野口を後目に西城は野口をベッドに誘うのであった。
「 ルームサーヴィス 」
ブルース・ウィリスのエキシビジョンマッチを見に来た女性(渡辺幸枝)は、そこそこ有名な声優であった。親切なベルボーイ(菊原光一)に案内されて部屋に入った彼女は、急用で一緒に来られなくなった友人に得意げに電話で話していた。ベルボーイは、ドリンクのサービスをもってきてくれたり、何かと世話を焼いてくれて、女はリゾート気分を満喫していた。
しかし、部屋に過去の自分が写っている写真が投函される。不気味に思った女はあわててフロントに連絡するが、また同じベルボーイがやってきて、その写真は自分が撮ったと告白し、自分は、貴方のファンで是非自分に愛をささやいてほしいと懇願する。
怖くなった女は逃げようとするが、ベルボーイは電話線を切断し、女に襲いかかる。格闘の末、なんとかバスルームにベルボーイを閉じこめた女は、警察に電話をする。ドアがノックされたのであわてて女が扉を開けると、バスルームに閉じこめたはずのベルボーイの姿があった。そして女は発狂するのであった。
「 ウォークイン 」
神奈川警察の新米刑事(菊原光一)は、風営法違反の囮捜査のため、部屋でデートクラブ嬢を待っていた。刑事は準備万端に整えてリハーサルにも余念がない。ようやくデート嬢(高畑加寿子)が部屋に現れる。刑事は、囮捜査であることを必死で隠し、証拠を握ろうとするが、デート嬢は尻尾をつかませない。
逆上した刑事は、ついにデート嬢に襲いかかってしまう。しかし、デート嬢ははじめから刑事であることを見抜いており、逆に刑事は翻弄され金を取られて取り残されるのであった。
「 アライバル 」
北海道から友人の葬儀のため横浜に出てきていた美穂(高畑加寿子)は妊娠3ヶ月であった。しかし、幼少期に母親の愛情を受けていないと感じていた彼女は、子供を産むべきかどうか迷っていた。
突然部屋が暗くなり、そこに幽霊が現れる。それは10年以上前に他界した美穂の姉・久美子の幽霊(渡辺幸枝)であった。最初は怯える美穂であったが、久美子の生前と変わらぬ姿に美穂は安心して悩みをうち明ける。
久美子は、美穂が母親の愛情を受けていないなどと言うのは美穂の勘違いで、子供をしっかり産んで欲しいと語る。自分の過去の事実を明かされた美穂は、迷いを吹っ切り子供を産むことを決心し、久美子に感謝する。感謝の言葉を聞いた久美子の霊は、また突然美穂の前から姿を消すのであった。
「 V・I・Pルーム 」
三流ボクサーの木村(小倉昌之)は、明日のエキシビジョンマッチでブルース・ウィリスと対戦することになっていた。そしてそれが、彼の引退試合であった。試合といっても見せ物の当て馬であり八百長の試合である。しかし、大舞台で引退試合が出来ることになった木村は、舞い上がっていた。トレーナーの中井(菊原光一)はそんな木村を苦々しく思っていた。
中井は、現役時代木村の後輩であったが、木村の負けてもチャレンジしてゆく姿に感動してボクシングを続けていた。その先輩が、引退試合で八百長をするなどは許せなかった。
せめてプロボクサーの誇りとして、八百長だけはやめてくれと頼む中井に、木村はそんなことは出来ないと拒絶する。しかし中井は、木村の妻と愛息を勝手に会場に呼んでおり、息子の前で恥ずかしい真似は出来ないはずだという。勝手に家族を呼んだ中井に木村は怒るが、中井に説得され正々堂々と引退試合を行うことを誓うのであった。
「 チェックイン 」
大阪から、東京見物に来ていた老夫婦の大輔(小倉昌之)と華子(高畑加寿子)はホテルの部屋でも喧嘩ばかりしていた。心臓の悪い華子が、夢で天国からお迎えが来る夢を見たという。大輔は一笑に付すが、本当にホテルの部屋に天国からの迎えである天使(渡辺幸枝)がやってくる。
大輔は追い出そうとするが、華子は天使と共に天国へ行こうとする。本当に華子が死ぬのだということを悟った大輔は泣き崩れる。華子は大輔に別れを告げ、静かに天国へ旅立って行くのであった。
「 メイクルーム 」
さくら(近藤綾子)と一郎(太田和輝)はホテルの従業員である。一郎は、不真面目なさくらに仕事をさせようとするが聞き入れない。困り果てた一郎は、ブルース・ウィリスのエキシビジョンマッチのチケットをダフ屋から高額で手に入れる。そのチケットをさくらに譲る引き替えに真面目に仕事をしてくれと懇願する一郎。しかし、さくらは、チケットを持ったまま彼氏の元へ逃げてしまう。さくらを追いかける一郎。実は二人は親子なのであった。
公演メモ
・劇団創立以来はじめての本公演でのオムニバス作品。タイトルは、当時流行っていたタランティーノ監督の映画「フォールームス」のもじり。
・ホテルの一室で行われるオムニバスの芝居を”グランドホテル形式”というが、実は娯楽天国第2回公演の予告が「グランド・ホテル」というタイトルであった。11年後にして、予告が成就したことになる。
・ついに脚本家・小倉昌之はネタに困り、劇団員一同で話の骨子をつくる。劇団創設以来はじめて、「作・劇団娯楽天国」となる。この作品以降、実は脚本は劇団員の総意によってつくられていることはあまり知られていない。
・作品中の「チェックイン」は、稽古の段階ですでに観たものの涙を誘う名演となった
座長が当時を振り返って
「この作品は、役者が何役も兼ねるという芝居ならではの醍醐味がある上に、内容も人情話から、喜劇、笑劇、ホラーまで色んな味が楽しめるええ公演やった。特に「チェックイン」という作品は劇団史上最高の名演とまでいわれたもんやが、観客動員が劇団史上最低の動員で少しの人にしかみてもろうてない(泣)。この公演を御覧になった人は、スゴい貴重な体験をされておりますです。ハイ。」