Vol.7 第7回本公演
La La Lu (ラ・ラ・ルゥ)
~不思議の国のルイス~
2年前…。とにかくファンタジイが演りたかった。
子供の頃、アリスの不思議の国に幻惑された。なんとも滑稽で
なんとも奇妙な世界が魅力だった。
作者のルイス・キャロルという人がいた。これまた滑稽で奇妙な人物だった。
ファンタジイの原型は竜退治の話だと知った。
それで物語の骨組みに竜退治のドラマをもってきた。
こうして「ラ・ラ・ルウ」というお芝居が出来た。
“ファンタジイ”の世界の中で“ファンタジイ”の作者を踊らせてみた。
するとルイス・キャロルの涙とそれを包み込む笑顔が見えてきた。
…最近、またファンタジイが演りたくなった。
だからまた「ラ・ラ・ルウ」を演ろうと思います。
情けないロリコン男が巻き起こすドタバタ・ビルドゥングス・ロマン。
どうぞ思いっきり笑ってそして少し彼の涙を味わって下さい。
1991年春 小倉昌之
(チラシのキャプションより)
作・演出:小倉昌之
1991年5月29日(水)~6月2日(日) 全7ステージ
会場:下北沢駅前劇場(東京/下北沢)
出 演
石井元
樋口乃梨子(神田かずえ改)
植松瑞代
羽角聖美
八木晶子
高畑加寿子
KUNIKA
高見貞則
川西宏
鶴田さおり
STAFF
舞台監督:山口勝也(バーニングブルー)
照明:大串博文(アステック)
音響:牛山惠子
音響操作:堀進太郎
音響コーディネーター:小宮山民人
舞台美術:佐藤大樹
舞台:高橋宏誌 馬野裕朗 河本満美子 今尾則之 牛島聡子
小道具:あいまいもこ
大道具:高津装飾美術(株)
衣装:羽角聖美 上田直史 堀進太郎
美粧:八木晶子
宣伝美術:上田直史
方言指導:川西宏
撮影:角田進
娯楽通信:石井元 神田一恵 草野美紀子 高畑加寿子
企画・制作:パラダイス・パーティ
STORY
英国オックスフォード・クライストチャーチの数学教師であるチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン(石井元)は、その名の通り“ドジ”で”損”ばかりしている中年の英語教師である。どもりの癖があるドジソン先生はいまだに独身で、対人関係が満足に取れない。それは父親である厳格な英国国教会牧師チャールズ・ドジソン師(高見貞則)の影響が大きかった。
ドジソンはいつも近所の幼女ロリーナ(鶴田さおり)、マリス(八木晶子)、イーディス(高畑加寿子)の三姉妹とばかり遊んでいた。中でも次女のマリスはドジソンのお気に入りであった。だが、周囲の大人達、クライストチャーチのヘンリー・リデル学長(KUNIKA)やその妻リデル夫人(羽角聖美)、ダイナ夫人(植松瑞代)などは、ドジソンがロリコンではないかと眉をひそめている。ついにダイナ夫人は学長に風紀がみだれるとドジソンの罷免を要求する。
窮地に陥り一人悩むドジソンは、マリスによく似た女の子アリス(神田かずえ)と出会う。彼女の後をつけた先生が遭遇した世界はアリス・イン・ワンダーランドすなわち、アリスの不思議の国であった。彼はそこで気違い帽子屋(川西宏)にであう。
アリスと帽子屋に連れられて、ドジソンは不思議の国を旅するが、そこで出合った奇妙な人物達は、先生の良く知った人たちに酷似していた。(それぞれ二役)チェシャ猫はダイナ夫人に。双子のダムディはロリーナとイーディスに。ハンプティ・ダンプティはリデル学長に。ハートの女王はリデル夫人に。
アリスはドジソンに不思議の国が恐ろしいモンスターに蹂躙されているので助けて欲しいと懇願する。そのモンスターとはドジソンの父、チャールズ師に酷似した怪獣ジャバウォッキーであった。気違い帽子屋に白い鎧と剣を手渡され、白の騎士となったドジスンはジャバウォッキーと戦う。
しかしジャバウォッキーを退治できないまま彼は現実の世界に戻る。自分を支配していたのは父親に対するエディプス・コンプレックスであったことを悟ったドジスンは、父親とは違う生き方をする事を誓う。そして自分の体験を小説にして、子供達にささげることにする。
タイトルは「不思議の国のアリス」。ペンネームはルイス・キャロル。
公演メモ
・本作品はルイス・キャロルの評伝になっており、1989年に新宿タイニイ・アリスで行った公演の再演。
・この作品で演劇の聖地・下北沢に進出。
・劇中にルイス・キャロルのつくった歌をふんだんに散りばめた、ソング・イン・ドラマとなる。
・美術監督の佐藤大樹はこの作品から本格的に参加。当時日大芸術学部の学生だった彼の人脈で、日芸の学生達が多数劇団に参加。日芸パワーが炸裂する。この後劇団は日芸出身劇団と誤解される。
・舞台監督に当時、劇団カクスコの舞台監督をしていた山口勝也氏を招聘。以後山口氏は劇団の主席舞台監督に。
・タイトルはディズニー映画「わんわん物語」のナンバー「La La Lu」。劇中エンディングに流れた。
・本番2週間前にマリス役の女優が逃亡。劇団初の大事件となる。あわてて初演時の八木晶子にお願いして事なきを得る。なお、その女優が平気な顔で公演を見に来ていたので、劇団一同呆れ怒る気もしなくなる。
・上田直史氏の描いたチラシの絵があまりにもディズニーの画風に酷似していたので、ディズニーから提訴されるのではないかと駅前劇場のHさんに脅かされヒヤヒヤする。が、何事もなく安堵する。
・記録ビデオあり。
座長が当時を振り返って
「いやぁ役者が逃げたときはびっくりして腰が抜けそうになったで。そういうことがあると話には聞いてたけど、まさか自分の身に降りかかるとはなぁ。しかし、永年芝居をやってると色んな事があるもんやけど、この後も御難続きで嫌になるで。トホホ…」