Vol.6 第6回本公演
東京国際演劇祭’90参加作品
聖者が街にやってきた
~When The Saints Go Marchin’in~
…今回もお察しのとおり喜劇です。
なんの変哲もない“街”には、なんの変哲もない“日常”があります。
そこに一人の“男”がやってきました。男を中心として、“街”の“日常”は
ゆっくりとゆっくりと渦の中に飲み込まれてゆく…
“聖者”という言葉をキーワードにして、ラジカルなスラプスティック・コメディを演ろうと思っています。
ことさら大声を張り上げるほどの不平があるわけではありませんが、
さりとてどことなく気の抜けたコーラのように退屈な今の時代、
もし時間を持て余していらっしゃるならば、
どうぞまたいつものように、劇場まで足をお運び下さいませ。
< 私達は貴方の笑顔が見たいのです >
…なんて、クサイことはいいたくありませんが、ちょっといってみたいのも事実です。
だから是非、笑顔を見せに来て下さい。待ってます。
それまでお身体を大切に。では— M.O
(チラシのキャプションより)
作・演出:小倉昌之
1990年11月21日(水)~11月25日(日) 全8ステージ
会場:銀座小劇場(東京/銀座)
出 演
馬野裕朗
植松瑞代
神田かずえ
羽角聖美
蔭西珠実
高畑加寿子
KUNIKA(こてたつま改)
小宮山民人
STAFF
照明:大串博文(アステック)
照明操作:沼沢毅(アステック)
音響:牛山惠子
音響操作:木村美津雄
舞台:河本満美子 佐藤大樹
衣装・宣伝美術:羽角聖美
美粧:八木晶子
娯楽通信:仁田尾里美
企画・制作:パラダイス・パーティ
STORY
さびれたシャッタ-通り商店街にあるラーメン屋「来来軒」では、仕事もせずに競馬にいりびたる亭主ペテ郎(小宮山民人)と女将カヤ子(植松瑞代)が今日も言い争っていた。来る客といえば暇を持て余す煎餅屋のヤコ兵衛(KUNIKA)。やる気のない男達にカヤ子は憤る。男達の楽しみは客のソープ嬢マリアちゃん(蔭西珠実)の姿であった。マリアに鼻の下を伸ばす男達にカヤ子や娘のアンナ(高畑加寿子)、近所に住むユウ子(神田かずえ)は気に入らない。
あるとき町内会長の美容師ピラ子(羽角聖美)は、知らない間に商店街が地上げ屋に買い上げられているという衝撃的な話をもってくる。ラーメン屋を地上げしてもらって余所へうつろうというカヤ子。先祖からの土地だからと乗り気ではない亭主ペテ郎。商店街の行く末を巡って一同の意見はまとまらない。
そこへ一人の奇妙な「男」(馬野裕朗)が現れる。「男」は一同の話を聞き、地上げに反対し、商店街再生に乗り出す。「男」に付き従うペテ郎やヤコ兵衛。それに反対するピラ子やカヤ子。商店街が二つの勢力に別れ争いが起こり始めたとき、徐々に物語は聖書の伝説へと変貌してゆく。
奇跡をおこし、商店街の人々を惹きつける「男」に対し、危機感を持ったカヤ子やピラ子たち抵抗勢力は男の排除へと動きだす。そして、弟子のユダ(ユウ子)とペテロ(ペテ郎)の裏切りにあった「男」はピラト総督(ピラ子)と大司祭カヤパ(カヤ子)の手によって十字架に磔となり「男」の姿はイエス・キリストとなる。
しかしここまでの話は、実は商店街のクリスマス祭りの演目をのアイデアを話しているユウコの話であった。「男」などは存在しないことがわかる。だが最後誰もいなくなったラーメン屋に「男」の姿が浮かび上がる。
公演メモ
・第2期劇団娯楽天国のはじまり。
・東京国際演劇祭’90の参加作品に選ばれる。
・初めて長めの8ステージをこなし、観客動員も900人弱となり、動員1,000人の壁ももうすぐであった。
・タイトルはジャズのスタンダードナンバー。誰もが知ってるあの曲。劇中に使用されたのは、ダニイ・ケイと”サッチモ”ルイ・アームストロングが映画「五つの銅貨」で歌ったバージョン。
・歌で芝居がはじまるという、劇団史上初のソング・イン・ドラマとなる。
・この作品以降、脚本と演出は座長小倉昌之が担当することになる。
・現・美術監督の佐藤大樹はこの作品から参加。
・新宿の劇場シアター・○○○の元支配人○○○氏にチラシのデザインを酷評される。
・記録ビデオなし。
座長が当時を振り返って
「いま思い起こせばノリにノってたよなぁ。でも必死やった記憶があるわ。演出の青木が辞めて、ワシ一人の肩に劇団の運命がのしかかってきたんやもんなぁ…結果は1,000人まであと少しまでいったし、作品も評判良かったし、ピンチの後にチャンスありとはよういうたもんやで。」