Vol.5 第5回本公演
碧空
~Blauer Himmel~

“流レル雲ヲ噛ミシメテイタ事ガアリマスカ?
星降ル夜空ニ心震ワセタ事ガアリマスカ?
時間ト群衆ノ濁流ニ飲ミ込マレテ、見上ゲル事モ忘レテハイマセンカ。
空ハイツデモ貴方ノ側ニアルノデス—”

ビルの陰に切り取られた小さな空しか見えない貴兄諸姉に、
空に託す時の物語をお贈りします。
空–この不変かつ雄大なるものに心遊ばせてみませんか。

私たちもご一緒します。
-M.O-
(チラシのキャプションより)

作:小倉昌之
演出:青木貴

1990年3月16日(金)~3月19日(月) 全6ステージ

会場:銀座小劇場(東京/銀座)

出 演
小倉昌之
神田かずえ
羽角聖美
草野美紀子
蔭西珠実
高橋宏誌
高畑加寿子
木村友祐
小宮山民人

STAFF

舞台監督:長谷基弘(劇団桃唄309)
照明:大串博文(アステック)
照明操作:沼沢毅(アステック)
音響:牛山惠子 萬谷優一
衣装・宣伝美術:羽角聖美
小道具:植松瑞代
美粧:神田かずえ
トレーナー:石崎千穂
スチール:角田進
娯楽通信:パラダイス・パーティ
企画・制作:パラダイス・パーティ

STORY

サラリーマン浦島一太郎(小倉昌之)は、憂鬱な毎日を送っていた。仕事は出来ない。彼女はいない。なんのために生きているのかと落ち込んでいた。

会社では今日も上司の船虫課長(小宮山民人)に説教されていた。周りを見渡せば、課長の小判鮫・鈴木(木村友祐)に幹部候補生のエリート稲田(高橋宏誌)など、一太郎の話の合わない同僚ばかり。さらに鮫原部長(羽角聖美)という男勝りの女部長は一太郎に無理難題を押しつけてくる。

そんな一太郎のオアシスは、部内のアイドル竜宮姫子(蔭西珠実)の存在であった。そして勤務中に姫子とのラブロマンスの白日夢を見ることが、唯一の幸福な時間となってゆく。

あるとき一太郎の白日夢にカメ(神田かずえ)という名の少年が現れる。カメは一太郎を夢の楽しい世界へと誘う。その世界は子供たちが遊ぶ懐かしく楽しい世界であった。久々に心が洗われた一太郎にカメは自分が書いたという絵日記帳を読ませる。その希望に満ちた楽しい日記を読んでいくウチに一太郎はそれが自分の絵日記帳であったことに気づく。カメは少年時代の自分だったのである。

少年時代に抱いていた希望を再確認した一太郎は、再び現実の世界に戻ってくる。そして、会社の窓から見上げたビルの谷間にも碧い空が見えることを知る。

公演メモ

・脚本は、当時サラリーマンとの二足の草鞋を履いていた小倉昌之の状況がモロに反映されている。
・劇団制作部の名称を「パラダイス・パーティ」と名付ける。パーティには“仲間”の意味と“宴会”の意味の両方を含ませている。
・本番2週間前に演出の青木貴が逃亡し、公演が危ぶまれる。
・初日の前日に客演の木村友祐氏の声が出なくなり、公演が危ぶまれる。
・タイトルはコンチネンタル・タンゴの名曲「碧空」から。劇中エンディングで流れる。
・看板女優・高畑加寿子はこの作品で初舞台をふむ。
・舞台写真を現在第一線で活躍中のカメラマン、角田進氏に撮って貰う。今では考えられないが、当時は氏も下積みの時期であったのだ。
・記録ビデオなし。

座長が当時を振り返って

「演出の青木は逃げるし、木村君の声は出ないし、劇団はじまって以来の危機公演であった。ワシ自身も会社と劇団の間に挟まれてヒジョーに苦しい時期やったし。やっぱり、精神的余裕のない時はよくないね。続々と悪いことが重なるもの。ワシとしては失敗作やと思ってるけど、この作品がベストやという人もいたりして、よくわからん。」