Vol.25 第25回本公演
おらんだちょうちょ

西暦2020年。その時計は150年の間、静かに時を刻み続けた…

時は幕末。英国商人グラバーから、ある下級藩士に託されたオランダ製の小さな時計。
男が志し半ばに倒れた後、その時計は人から人へと、蝶のように飛び渡ってゆく。
やがてそれは「阿蘭陀蝶々」という名で呼ばれ、人々はその数奇な行く末に思いを馳せた…
幕末から近未来まで、1個の時計が見つめてきた、時空を超えた6つのストーリー。
涙と笑い、別れと出会いに彩られた、ごく平凡な暮らしにもたらされる、
ちょっとしたさざなみ。その波紋はいつの間にか…。

劇団娯楽天国が21世紀最初にお贈りする、時を駆けるヒューマン・ストーリー。感動のラストは劇場にて!
(チラシのキャプションより) !

作・演出:小倉昌之

2001年11月2日(金)~11月4日(日) 全5ステージ

会場:TACCS1179(東京/下落合)

出 演
高畑加寿子
渡辺幸枝
壱森マサヒロ(シリアルナンバーズ)
菊原光一
近藤綾子
上窪勇樹
伊藤梨江
小倉昌之

STAFF

舞台監督:宮脇良太
美術監督:佐藤大樹
照明:大串博文(アステック)
音響:飯田博茂(飯田音響)
大道具:久保田貴 堀進太郎
中道具:今井園子
小道具:渡辺幸枝
衣装:高畑加寿子
VTR:堀進太郎
表方:草野美紀子 仁田尾里美 白石佐代子
制作統括・娯楽通信:吉村賢太郎
後援:ビーウィック有限会社
企画・制作:パラダイス・パーティ 高畑加寿子

STORY

第一環「 もだんがーる 」

時は大正時代。芸者の菊加寿(高畑加寿子)は、田舎から出てきたおシメ(近藤綾子)に踊りを教えていた。菊加寿は、おシメに現在は新時代だから、女も強くなったことを教える。そんな菊加寿に女衒(菊原光一)は、おシメを早く花柳界に出すように菊加寿にせかす。菊加寿は、まだあどけなさの残るおシメには客を取らせたくないと、女衒に頼むが、芸者風情が口応えをするなと張り手を喰らわせる。いくら新時代だといっても女はいつまでも弱いと嘆く菊加寿に、おシメは女衒が大事にしている金時計を盗んだことを告げ、時計を売り払って美味しい物でも食べようと誘う。

第二環「 ウェディングドレス 」

時は現代。父親(小倉昌之)は、娘(伊藤梨江)の結婚に反対していた。母親(渡辺幸枝)と息子(壱森マサヒロ)は、なぜ父親が結婚に反対するのかがわからなかった。なぜ反対するのかを詰め寄る娘に父親は、金時計を見つめ、実は自分がおかまであることを告げる。驚愕する家族の中、女装をして現れた父親は娘に自分の過去を話す。ゲイである父親を許した娘に父親は娘の結婚を承諾する。挙げ句の果てに父親は、ウェディング・ドレスを着て参列するとまでいうのであった。

第三環「 おらんだちょうちょ 」

時は幕末。京都・寺田屋の二階には、坂本龍馬と中岡慎太郎が寝泊まりしていた。階下で二人の番をするのは、竜馬の付け人の相撲取り(菊原光一)と丁稚(上窪勇樹)であった。相撲取りは、竜馬の素晴らしさやこれから訪れるであろう新時代の夜明けを期待を持って丁稚に話す。「おらんだちょうちょ」と呼ばれる竜馬が大切にしている金時計のことも楽しそうに話していた。そこへ、不審な浪人が現る。相撲取りは袈裟懸けに切られてしまい、彼の絶叫の中、竜馬と慎太郎も暗殺されるのであった。

第四環「 近未来 」

時は2020年。地球を滅亡の淵に追いやろうとしていた病原菌の研究をしていた博士(壱森マサヒロ)は今夜も研究室に泊まろうとしていた。博士を気遣う助手(渡辺幸枝)を帰した博士は、ボロボというロボット(声・伊藤梨江)と共に夜を過ごすことになる。そこへ博士の妻(高畑加寿子)が息子の急死を告げにやってくる。妻は博士が家庭を顧みずに研究に打ち込んだ非を責める。自責の念に駆られた博士は自殺を決意し、拳銃で自殺を図る。しかし失敗し、拳銃の弾は、たまたま通りがかった葬儀屋(小倉昌之)に当たってしまう。博士はあわてるが、葬儀屋の胸にあった金時計に銃弾は突き刺さり、彼の生命は無事であった。安堵した博士は更に研究に打ち込み、博士の発明によって地球は救われることになる。

第五環「劇団解散 」

時は現代。劇団地獄天国は、喫茶店でミーティングを行っていた。座長の戸倉(上窪勇樹)はいつものように脚本の仕上がりが遅いと劇団員に責められていた。座長の戸倉は、隣家から小道具として借りた金時計を皆に見せて、竜馬の金時計を主役とした作品の構想を劇団員達に話すのであった。しかし、ミーティングの中で劇団員は次々に劇団を辞めるということを告げて行く。引き留める座長戸倉の元を劇団員達は次々に去って行く。ひとりきりになった座長・戸倉は、借りてきた金時計をひとり眺めるうちに、それがホンモノの「おらんだちょうちょ」であることを知り驚愕する。

第六環「バースデイ 」

時は現代。産婦人科の待合室で、妻(伊藤梨江)の出産を待つ男(菊原光一)はソワソワしていた。診断にきた近所の主婦(渡辺幸枝)と子供(高畑加寿子)は、お産の苦労を男に話し怯えさせる。そのうち自分が産気づいてしまった主婦は、男に手伝わせる。そこへ、男の義父がやってくる。彼は”おかま”であった。看護婦(近藤綾子)に自分は娘の母親だと言い張る義父の姿に男は困惑する。苦難の末に娘は無事出産を終える。実は、この義父こそ、時計の力で時空を超えた坂本龍馬であり、第2話の父親でもあり、誕生した息子は、第4話で博士を救うことによって地球を救うことになる葬儀屋の誕生であった。ここで金時計「おらんだちょうちょ」をめぐる大いなる環は完結し、全員の記念撮影で幕となる

公演メモ

・「ショウ☆ルームス」以来、本公演での2度目のオムニバス作品。前作の成功により二匹目のどじょうを狙う。
・第三環「竜馬暗殺」の登場人物と設定は全くの史実通り。
・第五環「劇団解散」はあまりにリアルであったようで、公演後本当に劇団は解散するのかという問い合わせが多く寄せられた。

座長が当時を振り返って

「最初は、”おらんだちょうちょ”という架空の金時計によって語られる、過去・現在・未来の同月同日同時刻の物語という設定で始まったが、御前会議(※)で、ストーリーの骨格が弱いと指摘され、急遽坂本龍馬が時空を旅する話となってしまった。結果、竜馬が”おかま”になってしまうという変てこりんな話になってしもうたが、竜馬先生は草葉の陰で泣いておられるじゃろうのう。やっぱり二匹目のどじょうはおらんもんやで…(泣)」

※御前会議…初日10日ほど前に行われるキャスト・スタッフによる作品の最高諮問会議。この会議により、作品の内容が確定され、全くそれまでと違ってしまうことがしばしある。