Vol.9 第9回本公演
YELLOW ROAD
~黄沙之路~

むかしむかし、カンサス娘のドロシーは
3人の友人と一緒にエメラルドの都へと歩いていきました。
そのまたむかし、唐三蔵は3匹の従者を連れて天竺へと旅していきました。
そして今、4人の愚か者が自分たちの青い鳥を追っかけて旅立とうとしていた…。

今回は、毎日時間ばっかすぎて何やったらいいかわかんなく
なっちゃったあなたに贈る愛と感動の物語です。

お友達や御両親、ご近所の皆々様とお誘い合わせの上お越し下さい。
笑いの嵐うずまく中、ココロの珍道中へ お連れいたします。お楽しみに。
小倉昌之
(チラシのキャプションより)

作・演出:小倉昌之

1992年7月27日(水)~7月26日(日) 全7ステージ

会場:下北沢駅前劇場(東京/下北沢)

出 演
植松瑞代
馬野裕朗
羽角聖美
八木晶子
小宮山民人
高畑加寿子
松島大作(ホンキートンクシアター)
飯田茂
吉村賢太郎

STAFF

舞台監督:山口勝也(バーニングブルー)
美術監督:佐藤大樹
照明:大串博文(アステック)
音響:花田奈美
作曲:吉村渓
大道具:堀進太郎 今井則之
舞台:今井園子 松本篤子 中川原未来 阿部美香 石井千晶 小向納理子 中島祥介
小道具:鶴田さおり
衣装:羽角聖美
美粧:八木晶子
宣伝美術:上田直史
撮影:逆井良昭
運搬:トラック高橋
表方:草野美紀子 仁田尾里美 奈良清子
衣装提供:(株)ブライダルコアときわ
娯楽通信:羽角聖美 高畑加寿子
企画・制作:パラダイス・パーティ

STORY

泥嶋サユリ(植松瑞代)は、とある事務所で経理を担当するOLである。オールドミスでさえない彼女は、いい年をして夢見がちな乙女であった。彼女は「オズの魔法使い」の物語の大ファンで、ぬいぐるみのトトを抱きしめ自分が主人公ドロシーとなり、オズの世界を夢想する。それが彼女の哀しい趣味であり、唯一の癒しでもあった。同僚の西鬼馬ヒガコ(羽角聖美)や東風神ソネミ(八木晶子)は、そんな彼女を馬鹿にして毎日いびっていた。

そんなサユリにも夢があった。それは社長の御曹司キミヒコ(馬野裕明)と結婚する夢であった。将来を約束されたキミヒコは容姿端麗、頭脳明晰、サユリなどとは別世界の人間である。当然サユリの夢は叶わぬ夢であった。しかし今日もサユリはキミヒコを夢想しては仕事をしくじり、上司の鵺田シメオ(吉村賢太郎)に叱責されていた。

サユリの勤める事務所は、メンタル・コンサルタント、つまり、悩み相談所とカウンセリングを合わせたような業務を行っていた。そして毎日少しおかしな人々が相談に訪れていた。孫山サトル(小宮山民人)は、言語障害の悩みを、猪上ハチロー(松島大作)は閉所恐怖症の、沙川ジョー(飯田茂)は、ホモッ気のある自分に悩んでいた。経理担当のサユリは、普段クライアントと接することはなかったのだが、たまたまこの3人が訪れたとき事務所に彼女しかおらず、サユリがセラピーをするはめになる。

彼等が帰った後、マンチキンならぬマンキチという不思議な小人(高畑加寿子)が現れる。そしてサユリは、マンキチにつれられて夢の世界へと旅立つのであった。ところが、サユリが行った世界は憧れの「オズの魔法使いの」世界ではなく「西遊記」の世界であった。

自分の頭が禿頭になっていることに驚くサユリ。サユリは三蔵法師になっているのであった。クライアントの孫山は孫悟空(小宮山 二役)に、猪上は猪八戒(松島・二役)に、沙川は沙悟浄(飯田・二役)になっていた。マンキチに連れられて、サユリ達4人のエメラルドの都へ向かう珍道中が始まる。

途中、同僚の西鬼馬ヒガコにそっくりの西の国の魔女(羽角 二役)や上司・鵺田に似た偽・孫悟空(吉村 二役)などと対決し、漸く一行はエメラルドの都に到達する。

しかし、エメラルドの都とは見せかけで、実は恐ろしい火炎山であった。羅刹女(八木・二役)とキミヒコそっくりの牛魔大王(馬野・二役)におそわれる一行。憧れの人物であった、キミヒコが実は酷薄な犯罪者であることをサユリは知る。

だが、この最後の戦闘でふがいない従者3人は大活躍をみせる。遂に敵を退治した一行は、マンキチが楊柳観世音菩薩に変化する様を見る。菩薩はサユリに夢の世界と現実の世界のどちらに住みたいかを尋ねる。サユリは夢の世界を選択し、残りの生涯を夢の世界で過ごすのであった。

公演メモ

・ファンタジー3部作の3作目。この作品の後、ファンタジー作品はつくられていない。
・作品名が既成曲のタイトルからとられなくなった最初の作品。タイトルの意味は、小説「オズの魔法使い」でエメラルドの都まで続く”黄色いレンガの道”と「西遊記」の砂漠の黄砂吹き荒れるシルクロードのふたつに掛けている。
・劇中音楽は、全曲オリジナル。作曲は、音楽評論家の吉村渓氏に依頼。
・座長・小倉が初日前日にフィリピンバーで夜明けまで豪遊し、次の日劇場に大遅刻をするという失態を演じる。関係者一同が大激怒し、公演が危ぶまれる。
・制作統括の吉村賢太郎初舞台作品。この作品以降彼は表方に徹することになる。
・記録ビデオなし。

座長が当時を振り返って

「ワシが大遅刻したときのみなの怒りはそりゃすごかった。小便ちびりそうになったもんや。あのころワシは、フィリピンバーが好きで好きで、しょっちゅう通っていた。あれ以降フィリピンバーには一度も行っていません。行ってないっっ!」