Vol.26 第26回本公演
黄昏ペンション狂詩曲(ラプソディ)

モットーは“地球に優しく、客にはキビしい!?”
自然大好き新米オーナーの大誤算と大逆転!
長年のサラリーマン生活に別れを告げ、念願のペンション経営に乗り出した、都会に住むある夫婦。
長野の奥地に土地を得て、理想のペンション「あんだんて」をオープンさせたはよいものの、
「環境に優しく、客にキビしい」経営方針で客足はサッパリ…

このままじゃ即倒産!との厳しい現実に落ち込むオーナー夫妻の前にあらわれる、
ペンション経営の救世主!客足アップかと思いきや、今度は夫婦の仲がアブないことに…!

ペンションの成功と、妻への愛、新米オーナーが最後にとった選択は…!?

涼風ふきわたる高原のペンションを舞台に、「本当の幸せってなんなの?」を
一人一人に問いかける、”環境保護コメディ”の決定版です(?)

作:小倉昌之と劇団娯楽天国
演出:小倉昌之

2002年11月14日(木)~11月17日(日) 全5ステージ

会場:TACCS1179(東京/下落合)

出 演
高畑加寿子
渡辺幸枝
近藤綾子
細川あゆみ(劇団民藝)
太田和輝
伊藤梨江
中野照久
小倉昌之

STAFF

舞台監督:山口勝也(バーニングブルー)
美術監督:佐藤大樹
照明:沼澤毅
音響:飯田博茂(飯田音響)
大道具:久保田貴 堀進太郎
中道具:今井園子
小道具:渡辺幸枝
衣装:高畑加寿子
VTR:堀進太郎
表方:草野美紀子 仁田尾里美 白石佐代子
制作統括・娯楽通信:吉村賢太郎
後援:ビーウィック有限会社
企画・制作:パラダイス・パーティ 高畑加寿子

STORY

鴨志田章雄(小倉昌之)は、妻の千絵(高畑加寿子)とともに脱サラして東京から北アルプスの麓にある夕星村に移住してきた、農村回帰組である。村で章雄は念願のペンション「安暖手(あんだんて)」を経営していた。ヘビー・エコロジストの彼は、環境汚染から地球を守るためペンションで様々なことを行っていた。宿泊客には、エコロジーの必要性を熱っぽく説き、電気は太陽発電、食事の野菜は有機栽培、風呂に至っては、ガスを使用せず客に薪を割らせ入浴させるなど、とんでもないペンションであった。そのせいか宿泊に訪れる客などなく、夫婦は経済危機に陥っていた。それを近所の農家の主婦熊田初枝(渡辺幸枝)は冷笑していた。

ある日、女性客が訪れた。久しぶりの客に章雄は舞い上がり、いつもよりも熱心に接客するのだが、とんでもないペンションに客はあきれ、従業員の山根民子(近藤綾子)の対応にも怒って帰ってしまう。実はその客は、旅行雑誌のライター白鳥ツバサ(伊藤梨江)の覆面取材であったことを知り、千絵は落ち込む。

しかし、章雄はそれどころではなかった。サラリーマン時代に通っていたフィリピンバーのホステス、ヴィッキー(細川あゆみ)が章雄に養ってもらおうとペンションに訪れていた。ヴィッキーの存在を千絵に知られてはいけないと章雄は、必死で隠そうとする。しかしヴィッキーの存在が千絵にバれ、夫婦は経済危機に加え、離婚の危機に陥ってしまう。

千絵は妊娠しているが、このままでは子供を産むことができない。食材の配送でペンションをよく訪れる宇佐美昭太郎(中野照久)に千絵は悩みを打ち明ける。宇佐美は千絵を不憫に思い、力になろうと”レタス王”と呼ばれるレタスを大規模生産して成功した田野木重蔵(太田和輝)を農家の成功者をペンションに紹介する。

レタス王・田野木がペンションを訪れて、こんな経営では駄目に決まっている。改造すべきだと宣告する。勝手に田野木などに相談したことを章雄は怒るが、千絵は生まれてくるであろう子供のために田野木に指南を仰ぎ、必死の思いでレタス王・田野木に借金を頼みペンションを大改造することを決意する。レタス王・田野木は、ヴィッキーを見つけ、彼女が日本人で、自分の村から東京に出奔した狐塚稲子であることを一同にバラす。ヴィッキー(稲子)は正体がばれたことを恥じて逃亡する。

ペンションは大改造されるが、客が劇的に増えた様子はない。それを章雄はアザ笑う。配送屋の宇佐美は必死で打開策をを考えるが、いい知恵が浮かばない。従業員の民子がふと漏らした言葉をきっかけにレタス王・田野木は起死回生のアイデアを思いつく。それは、ペンションの内装は美しいままで、以前のような客に風呂を沸かせるなどの田舎生活を体験させる方法を売りにすれば個性的なペンションとなって繁盛するに違いないというのだ。エコロジーは遊びではないと酒浸りになっていた章雄は反対するが、千絵や宇佐美は賛同する。

改心してペンションに謝罪にきた稲子を料理人として雇い、ペンション「安暖手」は個性的なペンションを目指して全員が進もうとする。ペンションが自分の理想とかけ離れ、千絵の心も離れてしまったと感じた章雄は、ペンションに火をつけ燃やそうとする。それをみつけた千絵に泣きながら抗議された章雄は、ペンションを飛び出してしまう。

個性的なペンションは大成功して、毎日客が絶えない。しかし、章雄がいなくなったペンションに千恵の心は晴れない。そこへレタス王・田野木から連絡があり、章雄が沖縄の無人島にいることを知った千絵は迎えに行くことを決意するのであった。

公演メモ

・客演の劇団民藝・細川あゆみ氏は「防災家族」に続き2度目の出演。
・作品中、ペンションが大改造されるシーンは、舞台転換をあえて見せる演出となっているが、ウチトラ(身内スタッフが出演すること)として、舞台監督の山口勝也氏や美術監督の佐藤大樹も出演している。

座長が当時を振り返って

「この芝居は高畑加寿子とワシが夫婦を演じた2回目の作品で、「プレ・しましょシリーズ」ともいえる作品となっている。脚本執筆中にイギリスの劇作家レイ・クーニーの脚本と出会い、ここからレイ・クーニーに傾倒していくわけやね。ミュージカル化するとしたらこの芝居なんやけど、誰かええ作曲家おらんかいな。」