Vol.18 第18回本公演
どんほい

私は下町商店街の洗濯屋で生まれた。
店の前は小学校で、近くに小汚いが活気のある市場があった。
一番仲がよかったのは靴屋の倅とうどん屋の甥っ子。
なにをするときもいつも一緒だった。
遊び場は路地裏の広場。なぜかあのころ空き地が多かった。
ミシン屋の長男はいつも勝手にうちの家にあがりこんでいた。
うちの母が迷惑そうに飯を食わせてやっていたのを覚えている。
戦後すぐに建てたボロ長屋だったから隣との壁はなんとベニヤ一枚。
隣の婆さんの念仏が毎日聞こえていた。
祭りの日には「だんじり」が商店街を練り歩く。
2階建てのビルくらいの大きさなのにむりやり通るもんだから、
電線が切れて停電になったりした。
私も「せーらいどっきゃ!」といいながら八幡神社の御輿を担いだ。
あの掛け声はどういう意味なのかいまだにわからない。
去年、駅前の都市開発とかで私が生まれた家はなくなってしまった。
路地や空き地も消えた。だんじりも通らなくなり、念仏の婆さんも死んだ。
いつも一緒に遊んだ仲間たちはいまどうしているのだろう。
Masayuki Ogura
(チラシのキャプションより)

作・演出:小倉昌之

1996年12月12日(木)~12月15日(日) 全5ステージ

会場:SPACE107(東京/新宿)

出 演
丹治智浩
高畑加寿子
トラック高橋
渡辺幸枝
小倉昌之
仁藤明彦

STAFF

舞台監督:目黒多恵子 山口勝也(バーニングブルー)
美術監督:佐藤大樹
照明:大串博文(アステック)
音響:飯田博茂(飯田音響)
作曲:吉村渓
大道具:堀進太郎
中道具:今井園子
小道具:白石佐代子
衣装:羽角聖美
運搬:トラック高橋
音楽指導:吉村渓
表方:草野美紀子 仁田尾里美 永野美智子
制作統括:吉村賢太郎
娯楽通信:吉村賢太郎 羽角聖美 井村和人
協力:佐藤製薬株式会社
企画・制作:劇団娯楽天国制作部(パラダイス・パーティ) 高畑加寿子 渡辺幸枝

STORY

舞台上は、小汚い「いろは食堂」の裏手の空き地。そこは、町内の幼なじみたちの遊び場になっていた。

朝、豆腐屋のヒロシ(トラック高橋)がランニングにやってくる。ヒロシは仲間内のパシリだ。次に古道具屋の信ちゃん(仁藤明彦)が現れる。信ちゃんはいい年をしてまだ独身だ。次に風呂屋のババ子(高畑加寿子)が登場する。彼女は仲間の紅一点だが、まるで男のようである。そしていろは食堂のべったん(丹治智浩)が出てくる。彼は、店を手伝わずプラプラしていた。最後に仏壇屋の萬年堂(小倉昌之)が現れる。この5人は年が違えどいつもつるんでいる幼なじみの仲間である。例によって遊んでいると、いろは食堂から明子(渡辺幸枝)が出てくる。彼女は仕事もしないで遊んでいる彼等がうっとおしい。年老いた両親が苦労しているのも関わらず、弟のべったんが店を手伝おうともしないことに業を煮やしている。

ある日、例によって5人がダラダラ仕事もせずに集まっていた。温泉に行きたいという話になり、空想の中で一同は「温泉旅行ごっこ」を始める。よせばいいのに皆寒空の中ハダカになってしまい、温泉気分を満喫していた。そこへ明子が登場する。一同は目が覚めるが、バカなヒロシだけは目が覚めず素っぱだかでずっと温泉ごっごを続けているのだった。

ある夕方、信ちゃんと萬年堂は、べったんから明子が結婚して北海道へ行ってしまう話を聞く。喜ぶ一同。その夜みんなで、明子を囲んで結婚パーティを開く。喧嘩をしていてもいざいなくなると寂しくなりしんみりする一同。べったんの吹くハモニカの音が夜空に響く。

数日後、真面目に掃除をしているべったんの姿があった。。それを見つけた一同は仕方なく仕事に戻ることにする。

公演メモ

・タイトルの「どんほい」とは、ジャンケンの掛け声の西神戸方言。
・勝手に兄弟劇団を名乗っている劇団「カクスコ」の作劇法を借りて作った作品(パクリともいう)。短編の積み重ねで構成されており、通してみると話のストーリーらしきものがある。
・記録ビデオあり。

座長が当時を振り返って

「芝居の構成も、音楽のテイストも、演技法も全部カクスコによう似てる。泥臭いところだけ娯楽天国風やね。ほんまは、アカペラも入れるつもりで稽古したけど、あまりに下手すぎて、通し稽古の時にスタッフ一同からやめろいわれてナシになった。アレがあったら完全に盗作やがな。ナシでよかったかも知らん。続編の「どんほい2」を希望するお客さんもおるからそのうちやりまっせ。カクスコ解散してしもたし。ははは。」